オバマ氏の大統領就任によって、日米が1961年以来48年間も享受してきた好都合が失われそうだと言ったら、何を想像されるだろうか。実は、名前の発音の食い違いである。ケネディ・ジョンソン・ニクソン・フォード・カーター・レーガン・ブッシュ・クリントン・ブッシュと9人12期にわたり、合衆国大統領の姓は、英語でも日本語でもアクセントの音節が一致していた。しかし、日本での報道を聞く限り、次期大統領については、より原語に近い「オバーマ(バに強勢)」ではなく「小浜(オに強勢)」という発音が定着しつつあるように思える(ちなみに、オバマ氏以前に日米間で発音が異なっていたのはアイゼンハワー大統領)。 この例が示すように、人名を他言語に置き換えることには困難が伴う。飛行機の乗客名簿確認や入国審査、テロリストの捜査など、要注意人物を識別する業務では、このことが大きな問題を引き起こす。米政府は9・11同時多発テロ事件以降、特に中近東系の氏名の取り扱いに手こずっているが、英語表記への変換に統一性がないことが大きな原因だと聞く。さらに、文字数が多かったり耳慣れなかったりするため、スペルミスなどの間違いに気づきにくいことも事態を難しくしている。しかし、こうした点を考慮して多少の綴り違いを許容してしまえば、ただでさえ似たような名前が多いため、多数の旅客にテロリスト疑惑が生じて、シロと判定するまでの詳細確認作業に結局多くの労力がかかってしまう。かといって原語表記のままでは、テロ対策関係者や航空会社職員を含め、ほとんどのアメリカ人にはどこが文字の切れ目なのかすらわからないだろう。 1月12日から電子渡航認証システム(ESTA)の運用が始まり、ビザ免除制度を利用して米国に入国しようとする外国人は、インターネット経由で氏名・生年月日・旅券番号などに基づく審査を受け、事前承認を得ることが必要となった。手書きの入国申請書類を手作業で入国管理システムに入力するという手間が省けるので、スペルミスが減少し、要注意人物を識別する作業の信頼性も多少は高まるだろうが、それで万事解決といえるほどの効果は期待できない。表記の揺れなどの問題にも対応できる根本的な対策が待たれるところだ。
NTT DATA AgileNet (岡田)