年末年始は米国でも会食の機会が増えるが、先日ワシントンで参加した忘年会は、政府向けのIT業界関係者が1,000人以上集まる大規模なものだった。 会場の喧騒を逃れ、廊下で一休みしながら電話で業務連絡をしていると、筆者の隣に40代後半と思われる女性がやってきた。いわゆる「オバサン」風でもあるし、やり手風でもある。とにかく威勢は良さそうだなどと考えていたら、おもむろに前方の壁に据えられた大鏡を使って、化粧直しを始めた。人前での化粧直しは、日本女性の専売特許ではないらしい。 筆者の電話が終わった頃、先方の化粧直しも終わった。ふと視線が合ったので挨拶すると、アップル社のお偉い様と判明。軽口のつもりで「政府は税金を使って iPodを買っていたりしませんよね?」と言ってみたところ、「iPodこそが最も売れているんです」と意外な返事が返ってきた。学校で導入されている例は聞いたことがあるが、それには連邦政府は関与していないはずだ。一体、何に使われているのだろうか? 実は、イラクやアフガニスタンに駐留している兵士に支給されているとのこと。しかも、娯楽用ではなく、現地の言葉や文化の学習用だそうだ。画面を内蔵しているため、写真や動画で学習効果が高まる上、文字も学ぶことができるのが好評で、装甲車での移動中が主な学習時間になっているという。 そういえば、「敵に撃たれた際、iPodが盾になって一命を取り留めた」という記事を読んだことがある。実際は防弾チョッキのおかげであり、iPodの防弾効果は誤差の範囲だったようだが、読者からは「戦場でiPodを楽しむなんて自殺行為ではないか」という意見が多数寄せられていた。それが実は研修用の装備だったとは。 「防弾化するとさらに売れるかも知れませんね」と締めくくりの(?)冗談を投げたところ、「そんなことをしなくても、政府職員向けの遠隔教育にもよく売れているのよ、フフ・・・」と余裕の笑みを浮かべて会場に去っていった。いかにもワシントンらしい出会いであった。
NTT DATA AgileNet (岡田)