ワシントンDCの都市圏には、総延長170km・全米第2の規模を誇る地下鉄網がある。年間乗客数は2億人で、筆者も通勤に利用しているが、走行中に突然車内の照明が消えたり、駅で扉が故障して全員下車させられたりするなど、日本の地下鉄に比べると、信頼性は低い。
当然ながらダイヤも乱れがちで、利用者から見ると、時刻表は“発車時刻”ではなく“運行間隔”を示した表というのが実情だ。時刻表通りに駅に行っても、ちょうど列車が出てしまったところで、(乗り逃がした列車が自分が乗るつもりだったものかどうかさえ不明なまま)運行間隔またはそれ以上の時間待つことになる、などというのは日常茶飯事。朝夕のラッシュ時間帯は5、6分も待てば次の電車が来るのであまり問題にならないが、運行間隔が20分程度になってしまう夜間は非常に不便だ。
こうした不満が地下鉄運営当局に届いていないわけはなく、2年ほど前に登場したのが、ホームページや電子メールを通じた遅延情報の発信サービスである。これによって、携帯電話で遅延情報を受け取れるようになったのだが、どうもあまり便利にならない。「○○線で10分程度の遅れ」と言われても、その情報が発信された時点で10分前後の遅延が生じていたということしかわからず、結局「いつ駅に向かうのが最も効率がよいか」という厳密な推測には役立たないためだ。
「時間通りに来ないものは、どうやってもしょうがないか・・・」と諦めかけていた頃、コロンブスの卵といえる解決策が登場した。プラットホームにある、「今度の列車は何分後、次の列車は何分後・・・」という電光表示盤の内容そのものを、インターネット経由で見ることができるようになったのである。既存リソースの活用で利用者の満足度を大幅に向上させたという意味で、まさに教科書的な事例といえるだろう。
おかげで、列車が入線するのとほぼ同じ時刻に駅に着けるようになった。唯一の問題は、「数分差で電車が出てしまっていたら悔しいから、オフィスから駅まで走ろう」という機会が激減してしまったため、ベルト周りの改善が逆に遠のきそうなことである・・・。
NTT DATA AgileNet (岡田)